momologue

ひとりごと

Outreachyに応募できなかった話

タイトルに書いたようなことが最近起こりました。色々考えさせられた気がするので備忘録がてら書き起こしてみます。

Outreachyとは?

www.outreachy.org

Outreachyとは、FOSS(Free Open Source Software)の開発者コミュニティにおける多様性を促進することを目標とした団体です。 underrepresented group(女性やsexual minority, アメリカ合衆国におけるAfrican-Americanやヒスパニック等)に所属する人を対象に、事前に登録されたOSSの団体における3ヶ月間の有給インターンシップを実施しています。

まぁつまり、Google Summer of Code (GSoC)の変種という認識で良いと思います。

他にGSoCと異なる点としては、

  • 参加しているOSSの数がかなり少ない
  • 年に2回(5〜8月, 11〜3月)インターンシップを開催している(GSoCは1回のみ)
    • ただし北半球に住む人は5〜8月の回、南半球に住む人は11〜3月の回にしかそれぞれ応募できない
  • もとから各OSSの団体が受け入れるインターンの数が決まっている(GSoCはそうじゃないはず?)
  • 18歳以上であれば学生でなくても参加できる

などが挙げられます。

どこでOutreachyを知ったのか

coq-clubという、INRIAが管理しているCoqユーザーのためのメーリングリストがあり、私も登録しているのですが、そこでこんなお知らせが流れてきました:

https://sympa.inria.fr/sympa/arc/coq-club/2019-02/msg00019.html

重要な部分を抜粋すると以下のようになります:

It is no secret that the diversity situation in the Coq community is quite dire, to put it softly.

The Coq Development team takes these concerns very seriously.

Informal discussions about diversity have already occurred at a few developer meetings, a Code of Conduct [1,2,3] was added to Coq, and we are looking into Outreachy [4].

[1] https://github.com/coq/coq/blob/master/CODE_OF_CONDUCT.md

[2] https://github.com/coq/coq/issues/6477

[3] https://github.com/coq/coq/pull/8071

[4] https://www.outreachy.org/

このメールがきっかけでOutreachyという団体の存在を知り、さらに少し調べると、OCamlが今年Outreachyに参加予定であることがわかりました:

discuss.ocaml.org

おそらくいままでGSoCなどでインターンの機会を提供したことのなかったOCamlが、ようやく今回インターンをホストすることになったのに、それが応募資格に人種や性別による制限があるOutreachyを通してのものだったということで、全世界のOCamlファンの中には応募すらできずに悔しい思いをする人もいるんじゃないのか?逆差別的では...?ともやもやしつつも、自分は応募資格を満たしているかもしれないのでとりあえず今後の展開に注目していました。

応募してみた

2月19日に今年の5〜8月のラウンドに向けてのインターンの内容が公開されたので、Outreachyのホームページに見にいきました。こんな感じでした。

f:id:momohatt:20190222132049p:plain

ログインしていないと詳細は見られないということだったので、変だなあと思いつつアカウント作成をはじめました。

この時私は、メールアドレスとパスワードを入力したくらいでアカウント作成は終わって普通にそのあと続きをすぐに見られるものと思っていましたが、なぜかアカウント作成直後にInitial Applicationが始まってしまいました。

Initial Applicationでは、9ページにもわたって質問項目が続いていました。どういうシステムなのか分からず困惑していた私は、とりあえず指示に従って最初のページから回答を初めていきました。

前半は、自分の基本情報に関する質問だったので迷うことはなく、スムーズに進みました。

ところが、途中の5ページ目くらいにessayの問題がありました。これにはかなり時間を取られました... 問題は以下の4問でした:

  • Does your learning environment have few people who share your identity or background? Please provide details.
  • What systemic bias or discrimination have you faced while building your skills?
  • What systemic bias or discrimination would you face if you applied for a job in the technology industry of your country?
  • What barriers or concerns have kept you from contributing to free and open source software?

結構大変でしたがn時間かけて完答し、次のページに進みます。

後半は、予想していなかったことに、学校の学事暦に関する質問が多く続きました。 大学の公式なacademic calendarのURLを提出しろだの、今学期・来学期・再来学期の開始日と終了日を書けだの、細かい質問が多く、 この辺りからすでに嫌な予感がし始めていました。

とはいえすぐに回答できる問題ではあったのでさくさく埋めていき、提出ボタンを押します。

すると・・・

f:id:momohatt:20190222135016p:plain

嫌な予感が的中しました。応募できなかったようでした。私がessayに費やした時間はなんだったのかととても辛い気持ちになりました。午前3時でした。

確かに、応募条件には

All students must have at least 49 consecutive days free from full-time commitments.

という記述があったので自分がこれを満たせるかどうか微妙だなとは思っていたんですが、あまり気に留めていなかった(自己責任)のと、そもそもこの段階で弾かれてしまうとは思っていませんでした。。。

Initial Application not approvedという結果の下にはさらにこのような記述がありました:

f:id:momohatt:20190222135624p:plain

時間制約のcriteriaをそこまで重視するのならもっと早く言ってほしかった気もするなぁ、と思いながら、時間を無駄にした挙句に門前払いされてしまった悔しさを噛みしめました。

余談ですが、アカウント登録をしてログインした状態であっても私は未だにプロジェクトの詳細が見られないので、詳細を見るためにはログインだけでなくInitial Applicationがapproveされることが必要だったということがわかります。

感じた問題点

1. Applicationの流れが(ちょっと)非合理的

これは単純に応募システムに対する不満ですが、応募条件を満たすかを確認した後にessayを提出させるべきだと思いました。 応募条件は公開情報として書かれているとはいえ、特に時間制約の条件に関して、ここまで厳しく見るとは思っていませんでした。 単に私の期待が甘かっただけかもしれませんが、 いずれにせよ、運営の意向に沿わない応募者を、Initial Applicationの回答の一部に基づいてシステマティックに排除するのであれば、排除される人がessayに無駄に時間をかけることのないようなシステムにするのが筋じゃないかと思います。

2. 学事暦minorityに対する配慮が中途半端

日本の大学に通う学生として常々感じることですが、海外でのインターンシップやサマースクールの日程の多くは6月から8月の期間に集中しており、 日本や南半球など、学事暦の都合でその期間の大半が学校で埋まっている国の学生に優しくないことが多いです。

Outreachyでは、この問題にアプローチするため、5〜8月だけでなく11〜3月の時期にもインターンシップの機会を設けています。 これによって、南半球に住む人にも応募のチャンスを与えているのは素晴らしいことだと思います。

一方で、11〜3月の回に北半球に住む人が応募できないという制限によって、日本のように夏休みのタイミングが特殊で、11〜3月の方が比較的時間を取りやすいような北半球の国に対しては配慮がなされないままになっています。

OutreachyがOSS開発者コミュニティの多様性を促進することを目的としたプログラムであるのに、時期の問題で普通の学生が事実上参加できない地域が存在するのは残念に感じました。 折角プログラムを年に2回実施しているのですから、住む場所に関わらずどちらにも応募できるようにすれば、より世界の様々な地域に住む人が参加できるようになるのに、と思いました。

3. Outreachyだけに参加するorganizationがあってよいのか?

この一連の体験をTwitterで呟いたときの反応と、自分のこのOutreachyに対する最初の印象から考えたことです。

これはOutreachyというより参加するOSS団体側の問題ですが、この記事の最初で述べたように、今回のOCamlのようにGSoCには参加しないでOutreachyにのみ参加している団体が存在するのはやや問題に感じました。

また、そもそもOutreachyという団体の存在そのものが逆差別的ではないかという疑問を投げかける人もいます(いると思います)。 私自身もGoogle STEPという情報系界隈の多様性を促進するためのプログラムに参加したことがきっかけで、しがない初心者レベルだったところから大いに成長できた身であることもあり、こういった活動理念自体には共感します。 一方で、OSSにコミットしようとするという既に高い技術レベルにおいてもなお、多様性推進を目的としたプログラムがあることには(少なくとも最初は)素直に違和感を覚えたりもしました。

とはいえ開発者コミュニティの多様性の乏しさや、それがどのくらい問題視されているかはOrganizationごとに異なっており、organizationによっては(今回のCoqのように)Outreachyのようなプラットフォームを必要としているところもあるかもしれないので、Outreachyだけを見てその是非を議論するわけにもいかないでしょうね。

今回OCamlがOutreachyに参加した件について、そしてOutreachyそのものについてどう捉えるべきか、自分の中でも意見が定まっていないのでこれ以上何も書けませんが、 少なくとも言えるのは、今回私もOutreachyの応募資格を満たさない側の人間に回れたことに何故かほっとしているということです。

難しいですね。